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アベフトシとは

ダニー・ゴー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

96年にデビューし、98年のフジロックフェスティバルで熱狂のあまり何度もライブを中断したり、03年のミュージックステーションでのt.A.T.uのドタキャンの埋め合わせで2曲演奏し、未だに「伝説の夜」と語られるなど、エピソードには事欠かないバンド、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのギタリスト、アベフトシ。

イギリスのパブ・ロックやパンクをはじめとするロックミュージックに影響され、中でもイギリスのパブロックバンド、ジョニーキッド・&ザパイレーツのギタリスト、ミック・グリーンやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのメンバー全員が影響を受けた、Dr.Feelgoodのギタリスト、ウィルコ・ジョンソンから強く影響を受けた、非常に激しくもしなやかなギタープレイと、代名詞とも言える16ビートのブラッシング(カッティング)に影響された人も少なくはないでしょう。

惜しくも2009年に他界されましたが、今もってそのギタープレイは輝きを放っています。

 

ブログ内の画像は2013年に開催された「TMGE SHIBUYA RIOT!」にて筆者が撮影。

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再現するなら

アベフトシの機材は非常にシンプルで、ギターとアンプを直結したスタイル。

ほとんどの時期においてテレキャスターを使用し、アンプはハイゲインの物。

ギターは基本的にはseenという、原宿にある松下工房というギター工房が製作したブランドのものを使用していました。

初期は試行錯誤していたのか様々な仕様のテレキャスターが製作されていましたが、シングル「ゲットアップルーシー」の頃には「テレキャスターカスタムタイプでメイプルネック、指板はローズでボディは重めのアッシュ(ヘヴィ・アッシュ)であり、ネックは共通して三角ネック(Vシェイプ)、6wayブリッジ」という仕様が確立され、以降も基本的にこの仕様のギターを使用していました。

Vシェイプはフェンダーのヴィンテージ・ストラトキャスターやそのリイシュー、またはエリック・クラプトンモデルに採用されているネック・タイプで、その名の通りV型に成形されており、握りこみやすくコード・カッティングが非常にしやすいことで有名。

他にはグレッチやバーンズといったギターも所有していたようですが、ライブでは全てテレキャスターを使用。ピックアップは基本的にリアのみ使用。ダニー・ゴーという楽曲ではスイッチング奏法も使用していました。
そして、彼のテレキャスターはノイズ対策に全てピックガード裏のボディのザグリにアルミを貼っていたそうです。(ライトが当たったときに反射してギラつくというヴィジュアル面での狙いもあったそうです。)

~2014年ごろまでフェンダー・ジャパンのカタログ外モデルとしてアベ氏のテレキャスターカスタムの仕様を再現(メイプルネック・ローズ指板・アッシュボディでナチュラルカラー・赤PG、白PGの三種類)したモデルが販売されていたのですが、exclusive seriesへの移行の際に生産終了したものと思われます。

※2020年初頭よりIKEBEよりFSRとして再販されています。

現在はTOKAIのオーダーモデルとして似た仕様のギターが販売されていますが、こちらはボディがアルダーなので注意。

また、松下工房からも定期的に限定販売されていた。

https://www.premium-used-guitars.net/SHOP/e053.html

まとめると、ギターはアッシュボディ、メイプルネック、ローズ指板のテレキャスター、アンプはフェンダーのハイゲインアンプ、またはマーシャルのJCMならスタジオにも置いてある率が高く、再現しやすいでしょう。

https://www.ikebe-gakki.com/fender-ikebe/ikebe-fsr/index.html

 

GUITAR

seen Telecaster Type 一号機

キャンディ・ハウス / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

デビュー前に製作された、黒ボディに豹柄ピックガードのテレキャスター・タイプ。初期のPV(「キャンディ・ハウス」等)、ライブでよく使用されていた。

SPEC
ネックはメイプル、指板はローズ。ボディはアルダー。ネックは薄めで、ボディは重め。重く鋭いサウンドのカッティングのためだと思われる。
ピックアップはFender Vintage Telecaster 。

Fender Pure Vintage ’64 Telecaster Set【フェンダー】【並行輸入品】【新品】

ブリッジは6way タイプで、ペグはGOTOHのもの。

seen Telecaster Type 二号機

赤毛のケリー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

サブギターとして用意されたもの。ボディの色、ピックガードは1号機と同じ。
スペックが後に代わり、当初はアルダーボディにハカランダ指板であったが、アッシュボディにローズ指板へと変更された。 「赤毛のケリー」のPV等で使用。

SPEC
初期スペック ネック=メイプル 指板=ハカランダ ボディ=アルダー

後期スペック ネック=メイプル 指板=ローズ   ボディ=アッシュ※後期スペックにはネックのインレイがドット(丸)ではなく、ドクロ型。

ピックアップは フロント、リア共にFender Vintage Noiseless Telecaster。

ブリッジ、ペグは同じだが、ピックアップ・セレクターはトーン・ポット側へトグルスイッチとなって移設されている。

seen Telecaster Custom type 三号機

ゲット・アップ・ルーシー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

ここでテレキャスター・タイプからテレキャスター・カスタムタイプとなり、以後カスタムタイプが主流となる。

彼のテレキャスター・カスタムがFenderの物と決定的に違うのは、トグル・スイッチが本来は「肩」の位置ではなく、トーンのところに移設されている点である。

彼は手の振りが大きく、普通のスイッチの位置では手に当たってしまうため、移設したものと思われる。

色はナチュラル。「ゲット・アップ・ルーシー」、「カルチャー」のPV、ライブでも4号機が製作されるまでメインで使用。

フェンダーのテレキャスター・カスタムはネックとボディが3点止めされているが、彼は全て4点止めでオーダーしていた。

SPEC
ネック=メイプル 指板=ローズ ボディ=ヘヴィアッシュ
ペグ=シャーラー
ピックアップ=フロント Fender widerange Humbucker リア Fender original vintage telecaster set

Fender Original Vintage Telecaster pickup set【フェンダー】【テレキャスター】【新品】

seen Telecaster Custom Type 四号機

スモーキン・ビリー / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

98年の登場からTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの幕張メッセでのラストライブ、そして生涯最後のライブとなった吉川晃司@代々木第二体育館まで使われ続けた、彼の代名詞ともいえる黒ボディに赤鼈甲ピックガードのテレキャスター・カスタムタイプ。
PVでは「スモーキン・ビリー」、「G.W.D」、「GT400」等で使用。

テレキャスター・カスタムタイプのボディに赤鼈甲ピックガードというスペックは彼の敬愛するザ・パイレーツのギリタリストであるミック・グリーン(テレキャスター・カスタムを使用。色はナチュラル)とドクター・フィールグッドのギタリスト、ウィルコ・ジョンソン(黒ボディのテレキャスターに赤いピックガード)の両者のモデルを掛け合わせたような物になっている。

経年変化により、2009年時点ではボディの肘があたる部分の塗装が剥がれて来ていた。
トーンポッドのノブをビリオンダラーズのドクロノブに変更。新たに買ったわけでは無く、部屋の掃除中にたまたま見つかった、とか。

※3,4,5号機のスペックはすべて同じ。

Fender Original Vintage Telecaster pickup set【フェンダー】【テレキャスター】【新品】

seen Telecaster Custom Type 五号機

暴かれた世界 / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

2001年から登場した、黒ボディに白パールピックガードのモデル。四号機同様、トーンノブがドクロノブに変更。
2001年のツアー、「WORLD RODEO TANDEM BEAT SPECTER TOUR」ではメインで使用された。
その後は再び四号機がメインに返り咲いたため、サブギターとしてセッティングされていた。

SPECは3号機、4号機と同様。アベ氏曰く、「長いツアーだから同じ仕様のものがあったほうがいいな、と思って」

画像は2013年に開催された「TMGE SHIBUYA RIOT!」にて筆者が撮影。

テレキャスター・カスタムモデルを松下工房にオーダーした際、アベから「ボディの角を丸めないでほしい」というリクエストがあったそうだが、確かにフェンダーのテレキャスターカスタムと比べるとややボディが鋭角。

 

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seen Telecaster Custom Type 六号機

 seen Telecaster Custom Type 七号機

黒ボディにガンメタリック・ピックガードの六号機、七号機。

五号機と同時期に製作された。

六号機はフロント、リアピックアップがシングルコイルとテレキャスタースペック(ピックガードはテレキャスター・カスタムタイプ)。
七号機はフロント、リア共にハムバッカーと、テレキャスター・デラックスタイプ。

それまでのテレキャスターカスタムとは異なり、ノーマルなテレキャスターとテレキャスターデラックスがベース。

新たなミッシェルの音の方向性を模索していたようだが、アベ氏はあまり気に入っていなかったらしく、PV,ライブで使用されることはなかった。

GRETSCH Silver Jet

世界の終わり / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

デビュー前に購入したもので、ピックアップはフロント・リア共にダイナソニック・ピックアップ。
ビグスビー・アームからキャデラック・テールピースに変更。「世界の終わり」のPV、「cult grass stars」のレコーディングで使用された。その後、盗難に遭ってしまったという。

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BURNS 1960’s SPLIT SONIC

バードメン / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

アベ氏がイギリスに行った際に「見た目で買った」というギター。

60年代製のビンテージギターで、ミッシェルのシングル「ゲットアップルーシー」のレコーディングで、メンバーが敬愛する「THEE HEADCOATS」も使用したイギリスのトー・ラグ・スタジオで、オーナーのリアム・ワトソンから購入したそう。

後にガレージロック・リバイバルのバンドであるTHE WHITE STRIPESが「Seven Nation Army」が収録され大ヒットした3rdアルバム「ELEPHANT」のレコーディングでこのスタジオを使用し、世界的に有名に。

BURNSとはイギリスのギターブランドであり、有名なロックバンドだとOasisのメンバーも使用している。

ピックアップ・セレクターが特殊なもので、チャンネルを回すようにピックアップの出力を設定する。

「バードメン」のPVで使用。ライブではピックアップのパワーが足りず、基本的には使用されなかった。レコーディングでは使用。

別モデルではあるが現在もバーンズのギターは安価で手に入るため、試してみるのも可。

UNKNOWN Telecaster Type

アベ氏が所有していた黒ボディに暗めの赤鼈甲ピックガードのテレキャスター・タイプ。
seen製ではなく、別の工房で作ったものだという。ボディはアルダー、ネックはメイプル、指板はローズ。

ヘッドの裏にはウィルコ・ジョンソンのサインが入っている。

2013年に渋谷のタワーレコードで開催されたイベント「TMGE SHIBUYA RIOT!」にて展示されていた。

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他にも、レコーディングではストラトキャスター、初めて買ったギターはザ・クラッシュのミック・ジョーンズからの影響でヤマハ・レスポールカスタムモデル。

ストロベリージーン時代にはモズライト等を使用していた。

ほかにも、インディーズ時代やPV(デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ)ではFender Japanのテレキャスター・カスタムなどを使用。

意外にも、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT加入前には黒のGibson Les Paul Customを購入したこともあったとか。

AMP

アベ氏は基本的にアンプ直結スタイルであり、ハイゲインアンプを使用していた。

Fender The Twin

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赤ノブと黒ノブの2台所有。デビュー前から00年頃まで使用。その後は後述のSUNNがメインになるが、マーシャル導入までは使い分けていたそう。
ゲインチャンネルとクリーンチャンネルをミックスして使用していた。

既に廃盤だが、かなり出回ったモデルなので中古でも手に入りやすい。6~10万というところ。
コンボアンプで、100W。重量は30キロもある。

余談だが、ミッシェル解散後にロックバンド・シーナアンドザ・ロケッツのライブにゲスト出演した際、「The Twin、なければTwin Reverbよりはdevilleがいい」とアンプをリクエストしていたとのこと。

タワーレコード渋谷店にて展示してあったセッティングは、ゲイン6、トレブル0、ミドル、ベース10、プレゼンス-5、ヴォリュームは4、リバーブは0.
しかし、ギターマガジンでの特集でのセッティングでは ベース・ミドル10、トレブル4、ゲイン7.5〜8、ボリューム5、プレゼンス、リバーブ0、となっていた。

フェンダー Fender 【訳あり】ギターアンプ The Twin 【中古】【SS2009T】

SUNN MODEL TMODEL 410

「カサノバ・スネイク」のレコーディングから導入。
「ロデオ・タンデム・ビート・スペクター」では全曲で使用。
RISING SUN ROCK FESTIVALなどの大きい会場でセッティングされていた。小さいライブハウスでも使用を試みたようだが、パワーがありすぎるため使用されず。the twinと併用していた。

非常に切れ味の鋭い音ながらも、ヘヴィアッシュのテレキャスターと相まって粘り強さもあるサウンドになっている。

「赤毛のケリー」や「暴かれた世界」のギターサウンドが顕著。

中古でもなかなか見かけることの無いモデル。極稀にスタジオに置いてあることもある。

アベ自身が導入した際はまだ日本に数台しか入ってきていなかったそう。

余談だが筆者はハードオフでMODEL Tのジャンクを5万で見かけた。オークション、デジマートでもほとんど見ることがなく、相場は不明である。
セッティングは ベース7、トレブル5、ミドル10、ボリューム4~5、ゲイン4~5、プレゼンス0~3。

2016年にはこの「MODEL T」を再現したペダルが、オーストラリアのハンドメイドエフェクターブランドから「Midnight Amplification Devices Sonic Giant Sound」として販売されている。

Midnight Amplification Giant Sound

Marshall JCM900

後期のライブで使用。大きな影響を受けたジョニーキッド•アンド・ザ・パイレーツのギタリスト・ミック・グリーンが使用していた事から気にはなっていたそうだが、

もともとマーシャルに対して「扱いにくいのかな」という印象だったそうで、事実使いこなせなかった模様。

00年のミック・グリーンとの競演を期にもう一度使って見たところ自分に合う事に気付いたとのこと。

導入の決定打になったのは、2001年9月の沖縄でのライブの際、台風が直撃し機材が到着せず、

ザ・ツインも用意できなかったため、マーシャルを使った事だったという。
01年~03年のツアー、ラストライブ、ミッシェル解散後も使用し、氏の最後のライブとなった吉川晃司のゲスト・ギターの出演の際も使用した。スタジオには大体あるのではないか。

セッティングはトレブル0、ミドル、ベース、ゲインが10、プレゼンス、リヴァーブは0。

Marshall JCM900 4100

Fender Dual Showman

99年、World Gear Blues Tour及び、RISING SUN ROCK FESTIVALなどの大会場でセットされていたアンプ。2台用意されていた。

【中古】 Fender USA / 1977 Dual Showman Reverb With Basman70 Cabinet 【心斎橋店】

エフェクターは使用したことがないと本人は言っていたが、cult grass starsでVOXのワウを使用。

小物類

シールド

ALBASのカールコード。10m。チバユウスケも同じものを使用。

現在はALBASのカールコードは終売しているため、VOXの物が手に入りやすい。(ウィルコ・ジョンソンもVOXのカールコードを使用している。)

ピック

Fenderのオニギリ型ピック。色は白、硬さはミディアム。アベ氏は親指、人差し指、中指の三本で持っている。
猫やガイコツのプリントがされていた。

ストラップ

ミッシェル時代はVOXの細いものを使用。

チューナー

BOSS製、TU-12。

Marshallに接続する際は ギター→TU12→マーシャル となっていた。1mほどのシールドでチューナーとアンプを接続、チューナーとギターをALBASで接続。

チューナーはマーシャルの場合、ケースをアンプの取っ手部分に通して固定。ザ・ツインの場合は恐らく両面テープのようなもので固定していたものと思われる。

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初期はディーンマークレーの10~46を使用、後期はSITの10~46を使用。
余談だが、チバユウスケもSITを使用している。

メンテナンス器具
六角レンチやドライバー、アルトベンリ(ペグ回し)などを小さな黒い筆箱に収納。

スーツ

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT 時代のライブ衣装。
梅が丘にある「洋服の並木」で仕立てられたモッズスーツ。ミッシェルメンバー全員がここでオーダーしている。
アベ氏のものは「長い」と注文書に書いてあったそうな。

裏地には虎の絵柄と「安部フトシ」と刺繍されている。

白シャツに黒ネクタイ、黒シャツに白ネクタイ、黒シャツ・黒ネクタイと言った組み合わせがあった。

シャツ、ネクタイはWORLD WIDE LOVE!製。
現在はシャツ・ネクタイ共に販売されていない。

靴はドクターマーチンの10ホール、ブラック。

何足も持っていたそう。
沖縄など、暑い会場では靴紐までびしょびしょになることもあったとか。

 

まとめ

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今回はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのアベフトシさんの機材を紹介しました。

非常にシンプルですが、それ故に(手の大きさもあって)奏法にかなり重きを置いている印象です。

激しくカッティングをするイメージがありながら、細かいテクニックを持ち合わせていました。

コード主体のプレイなので、初心者も基礎を学べる良いお手本だと思います。